日本!(近江の祭・火祭)
No.48 甲田の とんど祭

■滋賀県彦根市甲田町、 平成26(2014)年1月撮影

彦根の殆ど米原市との境近くに甲田町は位置する。町を見下ろす背後の小高い丘に、天神社が鎮座している。天神社というと菅原道真公を連想するが、なんとこのお社の御祭神は久延毘古命(神)である。奈良県桜井市の大神神社には久延彦神社として祀られ、学問の神様として崇敬されているが、同じく学問の神様となっている菅原道真公とは別である。久延毘古命はは案山子(かかし)を神格化したものであり、田の神、農業の神、土地の神ということである。その案山子(かかし)を神格化した御祭神である天神社において、まさに「かかし」が竹と和紙で作られて「とんど祭」としてお正月明けに奉火される。作られる「かかし」であるが、田圃で見かけるような人としての見せ掛けだけで鳥を脅かす擬人化そのまんまの姿ではない。むしろ民俗的に興味深い姿である。作られた「案山子」には祖霊が来訪する時に身に着けているという必須アイテムである“蓑と笠”が和紙と竹で作られて荘厳される。その案山子は一本足で立っている。案山子が一本足であることは、両足歩行をする生態物を具象化したのではないことを意味している。一般的に案山子は蛇を現すとされているが、蛇は田ノ神・山ノ神の本質であって、祖霊との同質化がみられるのである。祖霊が蛇とは飛躍しているように思うが、子孫の共同体や固体を護るという意味や野鼠を捕食して田を護るという性格から同体化が民俗学的にみられる由縁である。ともあれ甲田町の「とんど」に登場する案山子は、案山子の姿となって顕現した祖霊・蛇の姿といえるだろう。この案山子が身にまとう和紙で作られた蓑が、ウロコのようにも見えて驚く限りである。

上左右; 立てられていた案山子は奉火前に斜めにされ、稲藁が積まれる。稲をまとい、穀霊としての具現化された姿となる。

上;奉火も下火になった頃、氏子らが銀紙に包んだ御餅を入れて焼きあがったころ食す。祖霊の送り火で穀霊の象徴でもある御餅を食べることは単なる食事というより、神人共食のいわゆる直会である。


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