日本!(近江の祭・火祭)
No.47 八ヶ崎神事

■滋賀県野州市五条 兵主大社、 平成25(2013)年12月撮影

滋賀県の野洲市に、大国主命(八千矛神)を御祭神として鎮座される兵主大社さんがある。この大社さんには、宮司さんが琵琶湖へ入水されて斎行される「八ヶ崎神事」がある。

現在の琵琶湖湖岸の「さざなみ街道」を走るとよく判るが、殆ど護岸工事で砂浜の浜辺が殆ど無い。しかし菖蒲浜(マイアミビーチ)と云われる辺りには今でも砂浜が残っている。
ここは野洲川などが運んで来た砂が堆積して出来た浜辺である。野洲川は昔は氾濫し易かった川で、琵琶湖へ注ぐ部分が8つにも分岐していたという。すなわち今の野洲市の名前の由来そして八ヶ崎神事の名前の由来も、八州という実情が転訛した名称であろうかと思う。
さて、兵主神社の御祭神は白蛇となって大亀の甲に乗り、鹿の群れに守護されて養老2年(718)、穴太(あのう・大津市穴太)から琵琶湖を渡って現在の野洲市あやめ浜に御上陸されたと云われる。
「八ヶ崎神事」で宮司様は大社から約4Km程離れたこの浜で、琵琶湖に入水されて神事を斎行される。
現在の兵主大社鎮座地が里宮で、浜辺が御阿礼すなわち顕現された御旅所ということになろう。
兵主大社にとって御祭神は、琵琶湖の彼方からの来訪神(まれびと)であったのだ。
神事では宮司さんは2度、琵琶湖へ入水される。
一回目は玉串を奉じて入水される。この玉串は琵琶湖で奉げて流し、陸へ持ち戻らない。所謂玉串奉奠であるからである。玉串を琵琶湖に奉げるとは、琵琶湖からの神霊の来訪に恭順の気持ちを示すことである。
そして二度目の入水では、璽に納められた御神体を奉じられる。入水は肩までしっかり入水されて、璽を琵琶湖と一体化される。これによって神霊の神威更新を図られるのである。
甦った活力溢れる神霊は璽に宿されて、大社に還御されるのが、この神事である。
琵琶湖への入水は、禊とは違うであろう。禊は清潔を尊ぶ神事の事前ステップであるから、神事本幹部分で入水する行為は禊ではなく、神事本体の行為である。
八ヶ崎神事の前に宮司さんが参拝者に向けて、入水は修行ではない、と念を押されていた。
修験道などにおいて滝に打たれたりすることで、自らの活力と霊力を増強しつつ自然のパワーを身に憑けようという荒行とは全く違うことは、その性質の違いが神道と密教系の相違に他ならない。
尚、古文書において250年前の江戸時代において、既に現在と同じスタイルで神事が行われていたことが確認されている。しかしながら一般参拝者にも公開されるようになったのは、ほんの5年前からである。つまり、それ以前は完全な秘儀であったのだ。一般が奉拝可能になった今、上記したように琵琶湖への入水が荒行と誤解されることを恐れる宮司さんのお言葉は、神道の立場からはもっともな事と思われる。
八ヶ崎神事を奉拝・撮影させて頂きまして、宮司様および氏子様皆々様に感謝申し上げます。写友の祭礼探訪様にも御礼申し上げます。


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