日本!(近江の祭・火祭)
No.30 御牢開神事 (ロウキリ神事)

撮影場所&日;滋賀県高島市安曇川町川島、平成22(2010)年9月23日
(能の写真は、平成16年8月8日に名古屋市で撮影)

不思議な神事を奉拝・撮影してきた。
滋賀県高島市安曇川町川島の、阿志都弥神社(あしづみ)で行われる、「御牢開神事(みろうびらきしんじ)」またの名を「牢切り神事(ロウキリ神事)」と呼ばれる神事である。
加茂大明神を御祭神とする神社は、集落のおよそ100軒が9組に分かれ、順番に一組3人が宮守として奉仕されている。この御牢開神事では、翌年の3人も加わった6人が、竹を縄で結んで牢というか鳥籠のような囲いを拝殿に設える。祭典では宮司さんの祝詞奏上の後、巫女さんがこの牢の中に入って、神楽を舞われる。祭典は10時からであるが、ちょうど頭上で猛烈に雷が鳴り、祭典の開始が20分ほど遅れた。やがて遠雷となったが、それでも大雨の中を社務所から拝殿に移動するのは大変であった。祝詞後の舞、巫女さんと云っても、齢88歳!になる老婆が巫女装束で鈴と扇を手に、牢の中で舞うのである。舞うという言葉は、ふさわしいのか、、、左右に一周づつ回転するだけである。それでも腰も曲った老婆が、舞と、そして記念写真の時は背筋がピシリと伸びたのは立派であった。舞は、老巫女さんの頭の高さだと1m四方ほどのスペースで舞われる。舞、、、宮守さんの一人も、あっ終わりですか?と云われたほどの時間で、およそ1分くらいで、楽奏も無しである。すごいシンプルである。この1分の舞のため、宮守さんは5時間かけて牢を竹と縄で作られたのである。神事だから。。。
当然、なぜ巫女さんが牢の中で舞うのか、疑問である。宮守さんによると、安産祈願だから竹の牢は母胎ではないか、と仰られた。祝詞を拝見させて頂くと、確かに安産祈願が述べられているが、されば母胎か、出産を穢れとして母屋と離れた出産の場の産小屋の象徴であるかもしれない。
その牢の中の三宝には、御神酒と拳2個大の石、そして短刀が乗っていた。守り刀は判るが、石とは???
宮守さんによると、88歳の老婆巫女さんが舞えなくなったら、出来る人が居無いと心配されてらした。その宮守さんらも60〜70歳代の方々ばかりであった。大津、京都や大阪への通勤圏内として住宅が増えるにもかかわらず、昔からの神事が6人の宮守さん、宮司さん巫女さん、そして撮影者の私の僅か9人で、ひっそりと斎行された。若い人達の参拝も無いのは、寂しい限りである。
※宮司さん、巫女さん、安曇川町川島の皆様に感謝申し上げます。

上左写真;拝殿全景、上右写真;牢の中の御神酒、そして刀と石。

上左右写真;祭典。


上写真3枚;牢の中への出入りと、舞。


■能【半蔀】

 御牢開神事を奉拝するまでは、能『半蔀』のような作り物を想像していた。能『半蔀』では、紫野雲林院の僧の前に一人の女が現れ、花々の供養をする。不思議に思って訊ねると、五条の辺りの者だという。僧が五条へ行くと、荒れ果てた家に夕顔が咲いている。日が落ち、その家から半蔀を押し上げて女性が現れる。そして光源氏との想い出を語り舞を舞う。女は夜明けの鐘の音とともに半蔀の中に消えていった。それは僧の夢幻だったのか。。。という話である。
半蔀は、夕顔の亡霊が現れる異界と現世の結界の装置である。亡霊は、半蔀の向こうの世界からこちらの世界にやって来るのである。御牢開神事が出産を象徴しているなら、それも無から有へと、あちらからこちらの世界への大きな次元の変動を伴う。それは神事において、祓いを必要とする程の変動である。
(一般的に演能は撮影禁止であるが、本写真は撮影OKの薪能で撮影)


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