日本!(近江の祭・火祭)
No.24 ドブロク祭(上砥山)、麦酒祭(牛飼)

■ ドブロク祭り

撮影場所&日;滋賀県栗東市上砥山、平成22(2010)年5月30日

日吉神社に午前9時半に到着したら、ちょうど神主さんに氏子さんらが上砥山川南の野神様を祀る碑と御神木へ出発されるところであった。この時、御神饌となる濁酒(どぶろく)は、既に徳利に入れてあった。野神様は日吉神社から直線距離にして500mほどの場所、現在は新興住宅に囲まれた所に祀られていた。ここでの祭典が済むと午前11時から日吉神社境内社の野神神社において再び祭典である。この日吉神社境内社でのお祭りであるが、小祭であって、日吉神社の主祭神のお祭りではない。元々は最初に祭典を行った場所に野神様が祀られていたのが、後になって日吉神社境内にも祀られるようになったようである。つまり最初の場所が御阿礼所と考えてよいだろう。
ここの祭礼は「濁酒祭り」と呼ばれているが、野神祭りが本質であったのに、ドブロクという特殊な御神饌がメインになってしまったと云えよう。むろん、その4月3日に元込み、4月29日に掛け米を行うなど手順を踏んで醸造されることは、いかにも神事の手続きを重んじていると云えよう。何故なら、今年の杜氏さんによると、濁酒は醸造3週間が一番美味いのだそうだ。美味い時期に合わせるのではなく、手続きを重視する辺りが神事たる由縁か。以前は醸造も醗酵がきつく酸っぱくなるほどであったそうだが、現在では冷蔵庫も完備されており、今年の濁酒はことさら美味しいとのことであった。今月24日には大津税務署の酒量とアルコール度数検査も行われ、濁酒は44L完成し、アルコール度数は15.6度だという。野神様の御阿礼所での祭典後の直会で頂いた濁酒は、透明感が強かった。これは上澄みだという。そして日吉神社の祭典後に境内で氏子さんらが莚を敷いて行う直会のときは、添付写真のように、かなりドロドロの濁酒であった。私はアルコール類が飲めないし、どちらにせよ運転なので、匂いを味わわせていただいた程度だったが、飲めないなりに美味しく思える良い香りであった。
田植えが済み、野の神様を迎え入れて饗応し、神人共食し豊穣を願う祭りが、このドブロク祭りであった。

※上砥山の皆様にはお世話になりまして、ありがとうございました。

上左右写真;野神祭りのヒモロギと碑

上左右写真;ドブロクを拝殿前階段から、直会の境内に下げる。

上左写真;境内の直会でドブロクを頂く。 上右写真;御神田。


■ 麦酒祭

撮影場所&日;滋賀県甲賀市水口町牛飼、平成22(2010)年7月17、18日

祭典は例年7月18日で、その前日に早朝未明より飯道山系の清水を汲むことから始まる。実際には麹の準備は7月に入ると行われているようだが、撮影は土曜日の午前中の仕事後に出発し、夕刻の醗酵・醸造がかなり進んだ状態から拝見させて頂いた。室温は30℃をほぼ保っており、麦酒も36℃前後で推移していたようである。私が到着した時は、30分ごとに攪拌をして醗酵を促してらしたが、やがて醗酵が進んで15分ごとになっていった。醗酵は社務所で行われるが、行程は新宮守、前宮守さんや仕込み人が何人もで担当されていた。その宮守さんであるが、広義では宮座の村座とも云え、氏子さんから還暦になった人から選出される。ここ牛飼では一月の宮守交替までの一年間が任期で、総社神社の行事のみならず、集落内氏子域の各社のお宮さんに、文字通り御奉仕されていらっしゃる。
本日(ほんび)は7月18日で、朝10時過ぎには白浄衣に着替えて神主さんを迎える。神主さんの到着が済むと、前夜に醗酵・醸造が済んだ三つの樽の麦酒を神主さんが検分(味見)して、神前に献饌する麦酒を決定する。三つ桶があるのだが、やはり微妙に味が違うので、ふさわしいと思われる麦酒が選定される。卜占ではないから、その選定には神意は反映されていないだろう。選定された麦酒は、別の空桶に移し、拝殿へ移動される。そして祭典である。修祓の後に、本殿に献饌される。この麦酒や、選定から漏れた麦酒も、撤饌後には、参拝者に直会としてふるまわれる。実際にはアルコール酵母が入っていないのでアルコール度数は無く、どちらかと云えばノンアルコール麦酒であろう。麦からの酒と云うとビールを連想するが、甘酒のような白くドロリとし、甘酸っぱい、それでいてクセになりそうな美味さであった。昔は麦の収穫も有ったようだが、いまでは祭典用に大麦・小麦・裸麦・ビール麦の四種が僅かに育てられているそうである。
麦から作ったドブロクとも云うべき麦酒を御神饌として献じる事例は、極めて珍しい祭典というべきであろう。

※牛飼の皆様にはお世話になりまして、感謝申し上げます。

上写真左右;温度管理は厳密である。時間ごとに検温する。そして攪拌。太鼓を叩いて囃すことで、醗酵が進むという。

上写真3枚;本日の朝、神主さんが三つの酒桶の中から、献じるにふさわしい麦酒を選定される。

上写真3枚;検定が終わると、本殿に麦酒を献じて祭典である。そして撤下後には、直会である。


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