日本!(近江の祭・火祭)
No.15 野神祭り(日野町 木津&増田)

■ 野神祭り(木津)

撮影場所&日;滋賀県蒲生郡日野町木津、平成21(2009)年8月23日

午後2時、集落の会議所を出発した上下の組は太鼓を先頭に、約400m離れた祭場へ向かう。日野川を渡った辺りで二手に分かれ、祭場の松の御神木に向かう。御神木は二本あり、上下の各組がそれぞれに供物をお供えするのである。供物は米粉を水で溶いて固めた団子であるが、形は鳥居や俵それにアニメキャラクターの人形の顔が描かれた平板なモノである。鳥居と俵形は二盆に乗せるが、俵形は50個ほど作り稲穂を一本立ててある。祭場では、御神木にそれらを削ってお供えしてから、卒塔婆の形の板を打ちつけ合ってから折り、その折れ方で上下の組の豊作を卜う。その後、上下の組はまた途中まで二手に分かれて祭場を出発し、橋の近くで合流する。出発地点の会議所へ戻る途中で、地蔵菩薩、八坂神社そして即往寺前の宝篋印塔にも供物をお供えして、野神祭りが終了した。
野神様は、若い女性だという。
私が思うに、女神様であるのは、産ぶ(むすぶ)の語源が娘(むすめ)、すなわち“産す女(むすめ)”に通じるからであろうと想像している。稲の神様など穀霊は、一般に女性の神様と云われているのは周知の処であろう。
であれば、祭場における二本の御神木は、陰陽、雌雄ではなく、純粋に上組と下組の二組の野神様の依り代ということだろう、、、ただ、そこら辺は不明である。
豊作を卜うのに、卒塔婆のような板を使うのも面白い。祖霊信仰が混ざっているようだ。卜で折れた卒塔婆のような板は、御神木に結ばれる。これも結ぶ=産すぶ(むすぶ)という、一連の産出する行為に繋がっている。
野神祭は、怨霊を攘したりするのではなく、豊作を祈願する行事と純粋に考えてよいだろう。しかしながら、野神様ってどのような神様なのか、、、ほんとうに興味深い。記紀には記載されていないような、素朴な漠然とした神様なのであろう。
余談になるが、鳥居や俵の形の作り物以外にアニメの人形が供物にある。アニメは無論、昔は無く、野菜や鯛などの御神饌を作っていたという。子供が多く参加していた昭和40年代頃から時代時代のアニメが作られるようになったのかもしれない。しかし残念ながら木津の小学生は5人前後しか居ないそうである。そのような事態になった今、再び昔のように野菜や鯛に戻してもいいのではないかと思うのだが。。。

上左写真;出発地の集会所に置かれた供物や卒塔婆形の太刀。
上右写真;元の上下の二組に分かれて祭場入りする。

上左写真;御神木に供された供物。
上右写真;太刀折り神事の前に、太刀あわせ。

上左写真;俵形、鳥居形の米粉団子。
上右写真;御神木に結ばれた、折れた太刀。

■ 野神祭り(増田)

撮影場所&日;滋賀県蒲生郡日野町増田、平成21(2009)年9月21日

増田の集会所を午後1時に、御幣を奉持した子供を先頭に、十人講の宮守さんらが増田橋を渡って約400mほど離れた祭場に向かう。そこでは芋茎で造られた子供が潜れる程の大きさの鳥居が三基、設置されている。御幣を御神木に立て掛けてから子供が三基の鳥居を潜り、そこで御神饌を戴く。神人共食の儀礼である。それから再び御幣を先頭に、集会所に戻る。戻ると、今度は太鼓を曳いて町内を周る。掛声は、「まいだれの〜ドンドコドン。もどされの〜ドンドコドン。」である。「野の神様が戻られるから、参ろう。」の意味かと思われる。太鼓を曳いて、最後は土俵が設置された公園へ向かう。そこで子供相撲が行われ、野神祭りは終了する。野神祭りは、女人禁制であるが、相撲だけは観戦することが可能である。
簡単に「増田の野神祭り」の順序を記してみたが、本来は順序が今と違っていたのではないかと思う。現在は、祭場の鳥居での儀礼→太鼓巡行→相撲であるが、本当なら 太鼓巡行→相撲→鳥居での儀礼、だった
ような気がする。相撲は遊びではなく、地霊鎮めと卜の意味もあったから、そのような儀式を経てから御神木の処で神帰しの儀式が行われるのが順当と思えるのだが。
太鼓巡行で太鼓の音で、野神様に御還りの刻であることを知らせると同時に、集落内の魔物・障魔を祓っていく。それから地霊鎮めの相撲を行い、勝負から豊穣かどうか卜う。それから祭場へ移動し、御神木を通って山の神々の世界・霊界へ御還えり頂くわけだ(多分)。増田では、芋茎で作られた鳥居の立つ三基の神座で神人共食をするのは、年齢階梯制による通過儀礼としての意味があったのであろう。

上左写真;芋茎でできた三基の鳥居が並ぶ祭場。
上右写真;「五穀」「豊穣」と書かれた御幣を、子供が奉持する。

上写真;鳥居を潜って神座についた子供は、ご神饌を頂く。

上左右写真;集落内を巡行した太鼓が、土俵に乗り上げた後、子供が相撲をとる。太鼓が乗り上げるのは、一種の清めの儀礼であろう。


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