撮影場所&日;滋賀県甲賀市滝、平成22(2010)年1月17日
自宅を午前3時半出発、現地5時20分着。現地発 午後4時10分、午後6時帰着で、滋賀県甲賀市滝の、「滝薬師のエトエト」を撮影してきた。早朝に到着したのは、午前6時前からのお餅搗から撮影するためである。エトエトとは一種の唱え詞、あるいは呪文であり、若水を汲む時、お餅搗き、社参行列でも唱える言葉である。この唱え言葉は湖南地域の祭礼でよく聞かれる言葉であり、恵方や干支あるいは兄弟を意味すると云われる。頭屋さんには満二歳になる子を持つ親のうち、一番早く生まれた子の親がなる。滝では上ノ組が5人、下ノ組が2人誕生しており、その子供の数は串餅の本数をも指定している。エトエトとはいうもののオコナイであり、天台宗の薬師如来を祀る龍福寺へ約1時間かけて社参する。ここのオコナイの特色は、お餅の種類のバリエーションと掛け方および牛玉宝印にある。お餅の種類は7種類にも及ぶという豊富な種類である。そして玉の餅(鏡餅)はお寺で竹籠に竹で括りつけられ、僧侶によって薬師如来の持物(じぶつ)である宝珠が朱書きされる。一種の牛玉宝印である。御鏡餅を立てかける方式は、甲賀地方のオコナイでは時々あるようだが、湖北では少ない。御鏡餅という名称からすれば、立掛けが鏡らしい置き方とも思える。しかし、吉野裕子氏の説のように御鏡餅の重ねが祖霊である蛇の造形を示唆しているなら、どちらが元祖か私的には分からない。元々元は重ねていたのが、蛇(カ)が鏡に変化し、実際に姿見の鏡のように立てかけるようになったのか。あるいは元々、鏡のように立てかけていたのが重ねて置くようになったのか、、、。
湖北のオコナイでは奉納された御鏡餅は集落内のみで鏡開きされ分割配分されるが、ここ滝のエトエト(オコナイ)では、子宝を望む人にも子宝餅としてお下がりされるのも特徴である。集落の結束のアイテムとして御鏡餅が存在する湖北のオコナイとは、明らかに違う点である。そして滝のエトエトでは子供が満二歳になった家族が妻子そろって参加されるのに対して、湖北でのオコナイは女人禁制が殆どである。オコナイとはいうものの、地域変われば、、、の特色を拝見して感動的であった。
※滝の皆様には、お世話になりましてありがとうございました!
上左右写真;頭屋において午前6時から餅搗きが行われる。今日の主役の二歳児の子が祖父と共に、餅搗きを見守る。やがて居間に搗かれたお餅が並べられる。
上写真2枚;頭屋さんが提灯を持ち和服の奥さんとお子さん、花餅、勤処が桶に各種お餅を入れて担ぎ、その後ろから満二歳の子供と奥さんが歩いて社参されている。
上左写真;本堂に置かれた玉ノ餅に、僧侶が朱筆で宝珠を描く。薬師如来の法力を憑かせる、牛玉宝印である。
上右写真;大般若経などの読経。