日本!(オコナイ)
No.14 エトエト祭り 老杉神社

撮影場所&日;滋賀県草津市下笠町 老杉神社、平成21(2009)年2月15日
撮影機材;Nikon D300+VR18-200mm、D80+SIGMA10-20mm
現地情報;まつりの本日(ほんび)は曜日に関係なく、毎年2月15日

草津市の老杉神社さんとその宮座八村において、例年2月15日を本日(ほんび)とするエトエト祭りがある。まず“エトエト”とは不思議な名前であるが、漢字では“恵年恵年”と書いて、豊年を意味する。言霊的に云うなら、同じ言葉を繰り返すと、意味合いが強くなるという呪術的用法であろう。
このエトエト祭り には、興味深い点が幾つかある。
三つほど挙げるなら、、、
第一に、神社での祭礼ながら、昔からの宮座が機能しており、8つの“村”が本老長(最長老)、本老長など、長老制度を設けている。村の間で一年ごとの持ち回りで神事元(じんじもと)が最年長者で選ばれて、頭屋となる。今年は、鉾之村が担当であった。
第二に、御神饌の豊富さである。神事元で2月10日から前日まで掛かって供え物の調製、蛇縄編みなどが行われる。御神饌の豊富さだけでなく、興味深いのは、男女の木の枝の人形である。お供えされる“初之膳”には柳の枝を使って顔まで描いて青紙製の裃を着せた、男性の人形が付く。“二之膳”には、赤紙製の裃を着た女性の人形が付く。この人形について手元にある書籍には説明が無いので、想像で書かせていただくと、、、やはり和合による豊穣を意味するのは周知であろう。しかしながらそれだけでなく、一度ご本殿や摂社末社に献饌され、拝殿では宮司さんによる祝詞奏上などの祭典が斎行されるが、その祭典が終わると撤饌されて拝殿に居並ぶ各村の老長の前に置かれる。そして盃の儀となる。これは、村の結びつきというだけでなく、呪術的には男女の人形による婚礼の盃ではないかと想像するのである。
第三点目の興味深い点は、蛇縄が今日から5月の例祭までの間、第二鳥居に結ばれる。これが通常の勧請縄なら、通年で掛けられるはずだが、期間限定とは不思議である。これは伊勢神宮の祭儀でいう、祈年祭から風日祈祭に相当するような、雨風順調を祈念する、呪具ではないかと思うのである。

本日(ほんび)の午前8時から、通称“蛇縄”が第二鳥居に掛けられる。この蛇縄、12日には担当となった村(今年は鉾之村)の神事元(じんじもと)において最年長の本老長(ほんおとな)他の老長(おとな)が寄り集まって編みあげる。この蛇縄、本日の前夜には神事元の玄関先に置かれて翌朝の出発を待つ。この蛇縄の長さは20mにもなり、顔はシュロを用いている。社参行列では、とぐろを巻いた状態で縄を縛り、竹を通して担いで拝殿まで運ぶ。御神饌は本殿・摂社末社に献じられるが、蛇縄は吊るされるまでは、拝殿に置かれる。そして鳥居には東を向いて掛けられる。
蛇縄だから魔除け、と言うのは単純だが、このエトエト祭りを拝観すると、左義長・蛇縄・男体女体人形など、それぞれバラバラの行事のように思えるものが、一本の筋道で読めてくる。
まず、蛇縄は意味深であろう。単なる魔除けではないし、邪霊・悪霊などから集落を通年で守る勧請縄とも異なると思う。通称“蛇縄”とは云うものの、顔は龍である。どうも日本の民俗宗教では、蛇と龍が混淆しているようで、ここ近江でも蛇が「ジャーさん」と呼ばれて龍の顔をしている事例は多い。琵琶湖に近いのだから水は豊富に思えるが、それは灌漑用水が整備された近年のことで、それまでは水不足が深刻な土地であったことが、近江の各所に残っている雨乞いに用いられたジャーさんの龍頭の作り物からも判る。
エトエト祭りでは老杉神社の馬場において、左義長の奉火の後に蛇縄が掛けられる。これは左義長で歳徳神あるいは山ノ神を送った後に、蛇縄で田ノ神あるいは農耕に必要な水ノ神を迎える意味があるのだろう。蛇か龍か、それが曖昧だが、曖昧だからこそ田ノ神でも水ノ神でも有り得るのだろう。曖昧さこそ合理的とは、まさに日本!である。農耕儀礼に必要な田ノ神あるいは水ノ神を神社に迎え、さて拝殿では男女の人形によって婚礼が行われるのだ。和合は人と農業の繁栄多産の予祝である。

※宮司様、神事元、および村の皆様、どうもありがとうございました。

《参考文献》
【いのりのかたち オコナイの諸相】 栗東歴史民俗博物館
【近江の太鼓踊り】 長浜市長浜城歴史博物館

上左右写真;神事元に準備された御神饌と蛇縄。翌朝の社参を待つ。

上写真;午前5時半に神事元を出発した社参行列が、第一鳥居に向かって田の中を進む。

上左写真;社参行列に奉仕する、御芋桶持ちと呼ばれる少女。八歳くらいまでの少女が務める。桶の中には、土器3枚・麻の緒3結・白米2合・青竹の管3本が入っている。
上右写真;神社馬場の左義長に、奉火点火が始まった。

上写真;左義長が炎上する脇を、社参行列が通る。

上写真;御神饌は、一旦 境内に並べられてる。

上左写真;摂社末社に献じられた初之膳。男体人形もみえる。初之膳の内容は、鯛・荒目・カマス・ハスギリ牛蒡・すめし・束牛蒡・青海苔・束大根・箸かくし、である。
上右写真;摂社末社に献じられた二之膳。女体人形もみえる。二之膳の内容は、鯛・銀葉・カマス・雀・はすぎり大根・すめし・束大根・束牛蒡・荒目、である。

上写真;本殿および摂社末社に献饌後、地元の人が参拝に訪れる。

上写真;午前8時、鳥居に蛇縄が掛けられる。縄で吊り、竹竿で押し上げて結び付ける。


上写真3枚;午前9時、祭典後に拝殿内で八村の本老長(ほんおとな)らの前に、撤下された御神饌が並べられる。
そして盃、、、。


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