撮影場所&日;2005年6月15日 伊勢神宮内宮 、同6月 同外宮摂社
能の表現で“幽玄”と云うことがある。世阿弥によると、「美しく柔和な体」、すなわち品格ある優美さや凛然とした折り目正しさで、能のめざす理想形をいう。そして“夢幻”。夢うつつで幻を見るかの意識の曖昧模糊とした世界。。
殆ど無人の伊勢神宮内宮に参進される神職さんの列には、厳粛な穢れ無き高潔な無欲だけでなく、奉拝する人を“幽玄”“夢幻”の世界に引きずり込む、感覚を痺れさせるような世界がある。
この精神的な世界は演出されることなく、参拝者も殆ど居なくなった夕暮れの深い内宮の森の中で展開する。
粛々として進む神事と参進の列は、「神に近い場所」を強烈に意識させる。
多くの日本人の心の底に、無意識的に刻み込まれた全国に点在する神社の存在。その日本の至高神の依代(よりしろ)の社として、八咫鏡(やたのかがみ)を御神器・御神体として奉じる伊勢神宮。1,300年も前から脈々と斎行され続けられている御神事。
参進の列は、殆どの日本人が奉拝することもなく、そして知らないままに一部の神職さんのみによって日本の心が維持されている現実。
私自身は、一般的な日本人と同程度の信仰心と宗教の知識しか持ち合わせない者なれど、この伊勢神宮の神職さんの参進される空間に、確かに厳かな姿勢を正す何かを感じる。
ぜひ当HPにお立ち寄り下さった方にもぜひ、人知れず日本の深部で展開する、“幽玄と夢幻の美”の世界を御高覧下さりたく思います。
尚、月次祭の〈興玉神祭〉〈御ト〉と、その参進をUP致しました。その説明は、『日本!No.4』を御覧下さい。昨年の同じ祭祀の写真がUPしてあります。今年は雨中の神事(雨儀)でしたが、昨年は晴天でした。写真の表現の違いも、『日本!No.4』で御覧下さい。
【興玉神祭】
月次祭は内宮・外宮の御正宮のみならず、別宮、摂社そして末社まで斎行されます。
三人の神職さんと、それを補助される祭典補助人(人夫)さんが随行されてました。
神職さんは、御神饌奉奠、祓、祝詞奏上などをされました。
【参考文献】
『伊勢神宮』櫻井勝之著、学生社
『神道祭祀』真弓常忠著、朱鷺書房
『伊勢神宮』千田稔著、中公新書
『伊勢の神宮・百二十五社めぐり』伊勢神宮崇敬会