■ 令和4(2022)年09月10日(土)、 三重県伊賀市 伊賀上野城
この日、午前中の仕事後に 名古屋でのカフェコンサートにおいて 谷口沙和さんのバイオリンを拝聴。その後、伊勢湾岸道・東名阪道を走って 三重県伊賀市の伊賀上野城 第39回 薪能へ移動。
伊賀上野城本丸広場で演能が行われるのはコロナ騒ぎで中断が有ったため、3年ぶりということである。
私自身は2018年が直近だから、4年ぶりに上野城で鑑能である。
前日まで雨天が心配だった(雨天は会館内で)が、見事な快晴の日となった。コロナ以前は見所(けんしょ=客席)は無料だったように記憶しているが、今回は¥1,000の有料席となり、250席が完売していた。特設舞台の設置や能楽諸師へのことを思えば安すぎるように思うが、伊賀市の行事であることを思えば、市の補助有っての良心的値段設定だろう。
番組は 狂言【雷】、能【杜若(喜多流)】であったが、その前に「伊賀市こども能楽教室」のお子さんや成人の方による仕舞が行われた。仕舞などを稽古している人にとって、薪能の舞台で稽古の成果が発表できるのは励みとなり、大変良いことだろう。
さて 能【杜若】は 「旅の僧の前に杜若の精が顕れて、功徳によって草木国土悉皆成仏と舞って成仏する」という事で単純に見れば簡単である。しかし杜若の精は在原業平の初冠に恋愛関係の有った二条の后・高子の御衣を身に付けて舞うから、その意味は単純では無く複雑である。
杜若の精の中で二人が合体しているかのように見えるし、二人の功徳だけを吸収しているだけのようにも見える。杜若の精は在原業平は歌舞の菩薩の化現で、その功徳で成仏できたと告げるのだが、その感覚は理屈では無く感覚で捉えないと難しい。
能の形式は一場物(単式能)であるが、二場物(複式)の夢幻能へ様式が発展する一歩前のようなスタイルである。僧侶が夢の中で体験したというより、シラフの状態で精が顕れるのも、夢幻能へ発展と途中のようにも思えるが、あるいはこれはこれで良いとも思える。
見所には初めて能を鑑賞する人が多かったためか、喜多流シテ方による解説も有った。
ただ、、、「お調べ」が始まっているのに解説が続いていたのは残念だった。 鏡の間での「お調べ」が本丸広場に厳粛に響く様子も、期待感の高まりと共に静かに聴きたかった。
◎ 狂言【雷】
(井上蒼大、井上松次郎、 米倉宏貫)
◎ 能【杜若】
(シテ;長田郷、ワキ;飯富雅介)
(大鼓;河村真之介、小鼓;後藤嘉津幸、太鼓;加藤洋輝、笛;大野誠)
(地謡;福田、松井、伊藤、高林、高林、松田、後見;長田、平塚)