■ 平成29(2017)年09月30日(土) 三重県伊賀市、伊賀上野城
◎ 能「安達原(黒塚)」
シテ;武田邦弘、ワキ;有松遼一、ワキツレ;岡充、アイ;茂山逸平 の各師ら
三重県 伊賀市 の 上野城 で開催された第34回 上野城 薪能 を鑑賞・撮影してきた。
有料開催で撮禁の薪能が多い中、無料で撮影可の上野城薪能はお城を借景に素晴らしい場所で開催される。もう34回目、、なぜ知らなかったかと後悔。。。
曲目は、 狂言(大蔵流)【寝音曲】、能(観世流)【安達原】※ であった。
※観世流以外では【黒塚】
切能物【安達原】の前場、熊野那智の山伏の祐慶らが奥州安達原の野中で一軒の庵をみつけて一夜の宿を願う。家主の里女は一度は断るが、根負けして招き入れる。老婆は山伏の前で糸繰車を操りながら、渡世の業に身を苦しめる果報のつたなさを恨み、老いの訪れの早さを嘆く。やがて浮々と糸尽くしの歌を謡い〈糸の段〉、転じて長き命のつれなさをかこち、糸車を操るのを止めて泣き崩れる。。。
山伏の破約へと自責への怒りから鬼婆に変容し、山伏に襲い掛かる後場の“動”に比べ、“静”の前場は、静かで味わい深い。庵を意味するススキの付いた藁屋の作り物は、能独特の場面転換に活躍する。山伏が到着した時、「姥」の面の老婆は藁屋内に佇む。藁屋から出てきて一転し、場所は庵の中となって、これまで庵全体を表現していた作り物は、庵の中の自室を表現すようになる。
上写真;奥州安達ケ原の野中の一軒家に山伏が着き、一夜の宿を願う。
上写真;結局、山伏の願いを受け入れ家に招き入れる。そして山伏に頼まれて人生の儚さを嘆きながら、糸車を操り見せる。お婆さん、結構いい人なのだ。
上写真;招き入れた山伏のため、暖をとろうと山へ焚き木拾いに出掛ける老婆。自分の留守中に自分の部屋を覗くな、としつこく言い残して行く。
上写真;あまりのしつこい言い草に、好奇心に負けた山伏の伴の者(能力)は山伏の就眠中に老婆の部屋を覗いてしまう。死屍累々と積まれた老婆の部屋を見て腰を抜かし、山伏に逃げるように伝える。
上写真;(後場)山伏らが破約したことに失望して腹を立てた老婆は、鬼の本性を現して山伏に襲い掛かる。老婆の犯した罪もさることながら、破約をした山伏一行の罪も また重いのだけど。老婆の犯行の証拠を見てしまった、とせずに例えるなら他人の心の闇にズケズケと踏み込んで他人を傷つけた。そのあげくその相手から恨まれる、そんな図式があるだろうが、この能の場合は山伏だけが善人ではないのだ。鬼女は山伏の調伏に祈り伏せられて、やがて消えて行く。