日本!
No.96 イワクラ( 静岡県、愛知県 機ァ

「磐座」と漢字で書かずに「イワクラ」とカタカナで書くのには意味が有る。

イワクラ学会によると 「 イワクラとは、縄文時代から古墳時代にかけて形成された巨石遺構をさす。その時代時代の人間が何らかの意図を持って、その目的や役割に合致するように磐を人工的に組み上げ、あるいは自然の磐そのものを活用したもの」と定義し、その中でも神社の御神体となっているものを 磐座、磐境 と呼んでいるが、わざわざのカタカナ表記は共通名称としてイワクラ学会が提示しているから(※)である。

このイワクラは、次の分類から成っている。神の依り代、天文観測装置、道標(ランドマーク)、海の道標(シーマーク)、通信装置、測量起点、結界、モニュメント である。

上記した最初の「神の依り代」であるが、それは神々を祭祀する宗教行事に関連した祭祀遺跡ということになる。

その「祭祀遺跡」では 神社社殿が建造される前の古代祭祀の痕跡を見ているわけで、古代人の生きた証と信仰心の証をも見ていることになる。

とは云え、祭祀が実際に行われていた痕跡を見つけるのはなかなか困難のようだ。祭具などがイワクラの周囲から出土すれば証拠として分かり易いが、実際に出土する例は極めて稀のようだ。古墳時代に祭祀が行われたとすれば実に1700〜1500年は経過しているという時間経過の問題だけでなく、古墳の玄室に収められた例と異なり奉じられただけなら破損、喪失しているからである。そして大きな点としては、御神饌を載せたような土器類は祭典が終わると撤去、回収されて例年の祭祀に用いられるからである。

そのような事を思えば、古墳時代から平安時代の祭具が出土した 天白磐座遺跡は稀有な例であるとから、イワクラとは何であったか考えるに相応しい事例である。よって拙HPのコンテンツの『イワクラ』をUPするにあたり、最初はその天白磐座遺跡から御高覧頂きたく思う次第である。

(※)「イワクラ学 初級編」平津豊著 ともはつよし社、2016年11月01日初版


■ 静岡県

上写真2枚;天白磐座遺跡(静岡県浜松市北区引佐町井伊谷 渭伊神社)

渭伊神社の社殿背後に、海抜41mの薬師山があり、その頂上付近に磐座が存在する。古墳時代から平安時代にかけての祭祀痕跡が出土している、祭祀遺跡として貴重な例だ。

磐座が存在するのが山の頂上と云っても、社殿横の階段を登って直ぐだ。

2つの巨石が目につく。左側の巨石Aと右側のBとの間には注連縄が渡してあり、AとBの間の地面にはAとBより小さいが三角形の巨石Cが存在している。主だったA、B、Cの巨石の周囲には大小さまざまな岩が散在している。巨石A〜Cの周囲を区画で区分すると、巨石Aの西側からは古墳時代前期後葉〜後期前葉の滑石製勾玉、手づくね土器、土師器、鉄製武具に工具が出土しており、その場所で祭祀が行われていた物的証拠が出土したことになる。そして巨石AとBに挟まれ、Cという三角形の磐の前からは平安時代(11世紀末〜13世紀中葉)の山茶碗、経筒外容器が出土しており、区画で祭祀が行われた場所を変えながらも、古墳時代から平安時代まで連続的に祭祀がこの磐座の前で行われていたことが分かっている。

この薬師山は神宮寺川の蛇行する場所に位置しており、下流域の農村の水神としての性質が考えられる。この磐座周辺の発掘は1988年に最初の出土品が出てから行われて、祭祀遺跡として詳細な発表が成されている。書籍として読めるので、書物名(※)を下記しておく。

(※)『聖なる水の祀りと古代王権 天白磐座遺跡』辰己和弘著、新泉社 2006年12月28日発行


■ 愛知県

上写真2枚;お皿さま(聖山;愛知県蒲郡市柏原町平古)、赤日子神社(蒲郡市神ノ郷町)の奥宮

俗称「お皿さま」という 磐座 を参拝・撮影するために、山に登る。標高328mの聖山、172mの中腹まで車で行き、あとは山歩きだ。車を置いた場所から25分で、「お皿さま」に着いた。

近くで拝する「お皿さま」は、まさにこの世の存在と思えぬ異様さだ。自然石のそのままの状態ではなく、人工的に積んだ石組みのように見える。この磐座は雨乞いの儀式の祭場であるから、その姿は龍なのだろうか。頭部のように見える部分は 龍、あるいは獅子というより、ゴジラのようにも見え、その姿に畏怖 そして恐怖さえ感じる。

「お皿さま」の名称の由来は、この磐座の頭部に、雨乞いの儀式の時に御神饌としてタニシを入れる皿ほどの窪みが有るからだという。

ところでこの「お皿さま」は、雨乞いに霊験ある里宮としての赤日子神社の奥宮である。

赤日子神社の御祭神は、彦火火出見尊、豊玉彦命、豊玉昆売命である。この蒲郡の地は三河湾に面して今でも漁港のある土地柄であるから、この海に関連した御祭神は理解できる。しかしそれだけで無いところがミソだろう。 彦火火出見尊は通称「山幸彦」で、豊玉彦命は大綿津見命であるから 龍宮の王。

豊玉昆売命は龍宮王の娘にして、「山幸彦」の奥方だ。「山幸彦」は龍宮を訪れた際、豊玉昆売命のとりなしによって龍宮の王から《塩盈玉》《塩乾玉》という2つの呪具を賜っている(【古事記】を参照)。

この2つの珠は、水が満ちる干す というように水勢を支配することができる秘具なのだ。その三柱を御祭神とする神社の奥宮であるから、やはりこの磐座は、龍神の姿をしていると思って間違いないかもしれない。

心の芯までグイグイとくる存在感の磐座だ。この磐座が雨乞い祈祷の重要祭場であった時代は、いつごろだったのだろうか、、。


上写真;岩神様 (愛知県蒲郡市金平町岩上)岩上神社

社殿横に「岩神」の銘板で表示された、高さ5mの磐座が鎮座している。神社の御祭神は 大己貴命 猿田彦命 であるが、岩が岩神と称するならばそれ自体が御神体と考えた方が良さそうである。威風堂々たる巨石だ。


上写真;大巌神社 (愛知県蒲郡市捨石向い)

最近建てられたと思われるコンクリート製の社殿裏んは、高さ4m程の大岩があり、雨乞いの神様が祀ってある。日照り続きで困った時には、餅をタワシにして、酒でこの巌を洗うと雨が降ると言われているそうな。社殿が建つ前には、そのように直接に磐座に接して祈念することも出来たのであろうが、現在はままならないだろう。磐は御祭神となり、祭典は社殿内部で執り行われるように変更されたと思われる。直接、御餅をタワシにして磐に触れる行為だと、神に直接触れて祈願するという意味で岩神であろうが、拝殿が新設されたということになると岩は依り代たる磐座に転じたのだろうか。


上写真3枚;岩座石(愛知県新城市須長雁峰)、石座神社(新城市大宮字狐塚)の元宮・奥宮・山宮

そして、林道・雁峰線への入り口にて。この車幅で、殆ど直線区間の無い隘路を行く。

神峯山(現・雁峯山)には古代の磐座があって、これが石座神社の起源だと伝わっている。社は上古、この山頂に御鎮座していたが、度重なる野火によって焼失し、そのため中古現在地(新城市大宮字狐塚)に移ったと伝わっている。山が神宿る霊山であった頃、古代人は山の霊異と一体化する目的で山に登ったのであろうが、生活様式の変化と共に里宮が建立されて、以前の磐座は奥宮となったのである。

磐座は国道301号線の途中から林道・雁峰線へ入って、13Kmの地点に安座している。車を駐車した場所から歩いて山登りが必要な磐座と違い近くまで車で行けるのだが、林道は落石や折れた枝が散乱し、車幅ギリギリ、しかも対向車とすれ違いが無理な区間が殆どだった。幸い対向車に全く出会わなかったが、片道45分の緊張を強いられた山間ドライブだった。


上写真2枚;五枚岩 (愛知県小牧市岩崎)熊野神社

小牧城のある小牧山の北方3Kmほどの地点に標高54.9mの岩崎山がある。標高は低いが濃尾平野の中で展望が効くということで、天正12年(1584年)の小牧・長久手の戦いにおいて、秀吉軍の稲葉一徹による砦が山頂に築かれた山で知られる。そして時代は江戸時代。名古屋城築城のおり、石垣に用いる石の採石場としてこの山の石が良質ということで各藩が石材を入手しようとした。その痕跡は各藩の御手付きという証に記号を岩に彫り込んでおり、その痕跡が残っている。そのような事情から山の形状はかなり変わったであろうが、それでも五枚岩と呼ばれる巨石は奇異な姿の磐座である。五枚の岩が並んでケーキのような姿だが、一枚の岩が分離したのだろうか?あるいは長方形の岩が運ばれて来て並べられたのだろうか?何だか人為的に岩を意図して並べたように見えるのだが、、、。岩の隙間には役行者の像が祀られているが、その経緯は分からない。


上写真;岩神 ( 愛知県豊田市岩神町 )若一神社 元宮

この岩神町は足助町大字岩神と旧名で呼んだ方が分かり易い。紅葉で有名な香嵐渓の南に岩神山大日堂と村社の若一神社がある。磐座は階段を登った若一神社社殿の左側の小道を雑草や小枝をかき分けながら3〜5分ほど歩いた山の中にある。磐座前には天保五年(1835)の灯籠と祠が立っている。耳を澄ませば巴川のせせらぎが聞こえるから、天保の頃も水の神として崇敬を集めていたのかもしれない。というか、確証は無いがその灯籠より千数百年も前から崇敬を集めていた祭祀遺跡である可能性は高いのだ。


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