■令和元年(2019)12月01日(日)、福井県敦賀市刀根 にて撮影。
刀根まつり(気比神社秋祭り・霜月まつり・みやあげ)を奉拝、撮影。
刀根まつり では一般祭礼と異なり、この祭礼独特の様式が伝承されている。まず東西の頭屋制である。頭屋の年齢が高い方が東で、低い方が西の座であるが、一部 献饌御神饌が違うだけで殆ど同じ行いをする。各頭屋には自宅の庭にオハコと呼ばれる依り代を設け、本日(ほんび)の一週間前に神迎えをする。祭具や特殊神饌にも特徴がある。祭具にはヤマウルシ製のカゴザラという48個の木枠、箸、ナギナタ、そしてネムの木製の板等々が特異である。当日早朝に搗くかれる御餅には二種類有って、赤餅はある程度固くなってから短冊状に切られて調製される。白餅は牛の舌と呼ばれ、8の字の形態に付形される。社参行列も特徴がある。特殊神饌の「ひつのふた」と云う御供を載せた御櫃の蓋を両側で捧げ持たれて、その下を「ヒツノフタ」と呼ばれる少女が歩いて行く。東西の座が有るが東座には赤餅を短冊状にしたもの、吊るし柿、そして昆布を、西座の「ひつのふた」には赤餅を短冊状に切ったもの、吊るし柿、そしてスルメが入れられている。
少女が御神饌の下を歩くのはいくつかの祭礼で見られるが、本来は少女が憑坐(よりまし)あるいは自身が人身御供であったのが、御神饌の供進役に転じているのだろう。人身御供研究の六車由美氏は このような事例について、「頭屋制という男性中心の組織に担われる祭祀形式が整備される中で 本来は神の示現に不可欠であった女性が祭りの中心から周縁に排除されていった」、と述べておられる。とは云え、今回 奉拝して思うのは、やはりこの真紅の羽織を着た少女が祭りの、秘めたる核心ではないかと思うのである。大変、興味深い おまつり であった。
刀根の皆様に御礼申し上げます。
上写真左;祭典の行われる気比神社。
上写真右;頭屋さんの庭の依り代である「オハコ」。写真は東座の頭屋さん宅。
上写真2枚;集会所の二階で、餅搗き歌と太鼓に囃されて御餅搗きが賑やかに行われる。
上写真;神号と御神灯の前の祭具。
上写真;御神饌と祭具の調製が済むと、社参行列に先んじてミヤアゲ(宮上げ)と呼ばれる青年が東西の座から2人づつ、御神前に一部の祭具を奉納に出かける。
上写真3枚;ヤマウルシの杖を持ったショードン、御幣を捧げ持つタユウ、ヒツノフタ、御神酒持ち、炭俵を持った少年と行列が進む。東座が先行し、西も続く。
上写真3枚;献饌。一般神饌(野菜、果物、魚、菓子)に続き、この祭礼特有の特殊神饌の献饌が行われる。上は西座のヒツノフタ。中は東座の特殊御神饌。下は西座の特殊御神饌。
上写真;祭典は通常の様式で斎行される。昭和8(1933)年に奉納された狛犬が祭典だけでなく、集落の移ろいを見守る。神社向かいには旧北陸線の刀根信号所が有ったが、北陸線の電化で路線の変更やローカル化の後、昭和39(1964)年に廃線となっている。狛犬は D50型やD51型蒸気機関車の力闘を眺めていたことだろう。