日本!(雅楽・舞楽)
〔鄙舞楽・地方舞楽〕 No.2 山名神社天王祭舞楽

撮影場所&日;

静岡県周智郡森町、山名神社、
2005年7月16、17日

撮影は16&17日の、二日間行ないました。初日は舞台に近接して、翌日は離れて撮影しました。
近接撮影では意図的に暗く写して、疫病に怯える民の心理状態を表現したり、ブラして舞の動きを表現してみました。
上左写真は、祭見物の女性を写させてもらいました(ありがとう!)。上右は、山名神社本殿です。

尚、ここの舞は中央楽家の舞楽とは全く舞い姿が異なりますし、曲名も【迦陵頻】以外は一致しません。お神楽のジャンルにリンクすることも考えましたが、「天王祭舞楽」と“舞楽”を銘打ってますので、こちらにリンクしました。


山名神社の御祭神は、須佐之男命で、江戸時代までは「牛頭天王社」と呼ばれていたという。牛頭天王はインドの祇園精舎の守護神で、仏教では薬師如来と同一とされ、日本に入ってきてからは須佐之男命と習合しました。須佐之男が疫病を流行らせる行疫神の武塔神と同一神とされたことから、牛頭天王と習合したのでしょう。
牛頭天王を祀って疫病を防ぐため、御霊会(ごりょうえ、みたまえ)や祇園会では疫神を鎮めるために山車・屋台を繰り出したり、歌舞音曲が行なわれたりした。貞観11(869)年起源の京の祇園祭も元々は、疫病をもたらす御霊(怨霊)を鎮める祭りが後世に屋台を出すなどして風流化したのである。山名神社の天王祭も同様な意味を持つ、疫病封じの祭りです。
山名神社天王祭の舞は、室町前期の京・祇園八坂神社御霊会の芸能をモデルにしたとされているが、一時途絶えた時期があり、それを慶長11(1606)年に大阪四天王寺から再伝して再興したとされている。が、現在の舞は中央の神社仏閣・宮廷での舞楽とは全く異なるため、雅楽四天王寺楽家によるものではなく、四天王寺の祭礼に集う雑芸芸能者による風流舞が伝播した可能性の方が高いと思ってます。
ただ、伝播はどうであれ京・祇園祭では途絶えた天王祭の舞を伝承しているとされており、奉奏される八座の中でも特に【龍】【蟷螂】は日本でも唯一で、貴重な民俗学的な舞です。
舞のスタイルとしては、面(おもて)を憑(つ)けるのではなく、作り物を頭に載せ、顔は隠しているのも特徴です。舞屋(神楽殿)の周りを、屋台が巡行するのも同時進行で見応えがあります。

《参考文献》
山名神社配布資料(中村茂子著「芸能史研究」No.124より)
【神道行法の本】学研
【日本の神々の辞典】学研

(参考HP)森町


【神子舞(みこまい)】17:10〜17:30
京都祇園祭、蟷螂鉾幕模様と同じ夕顔の打ち掛けで舞ます。この舞の前に【八初児(やつはち)】(未UP)という清めの舞があります。清めに続いて巫女舞ですから、神懸かりか神降ろしの舞の意味合いがあるのではないでしょうか。


【鶴】17:40〜18:00
阿吽の一対の鶴が舞います。鶴の造形を頭に載せて、顔は赤い付毛で隠して舞います。背中には15枚の羽根を付け、両手を広げると扇状に広がります。


【獅子】18:40〜19:00
阿吽の一対の獅子舞で、顔は鼻掛けで隠して獅子頭は頭上に乗せます。享徳年間(1452〜55)〜文明年間(1469〜87)には讃岐・紀伊・尾張など地方の祇園会に舞車が出て、そこで舞われていたようです。


【迦陵頻(かりょうびん)】19:10〜19:30
迦陵頻は、天竺の祇園精舎に舞い降りたという鳥です。中央の舞楽にも同名曲が有りますが、舞ぶりも姿も全く異なります。中央の舞楽が変質したというより、迦陵頻という空想の鳥をイメージして独自に創作された舞ではないかと思いました。


【龍(りょう)】19:40〜20:00
龍神信仰の主願である雨乞い祈願の舞です。雌雄一対の舞で、龍を頭に載せて顔は赤い付け毛で隠します。尾には紙製の尻尾を付けて、舞の途中で舞台前面左右の柱に逆立ちしてブラ下がり、そこから反り返ります。龍神が天に昇る様を表現してるのかもしれませんが、このような危険な舞をすることで祈願を強く訴える呪術性を感じました。


《屋台》 山名神社の氏子9町内のうち、8町内が屋台を出します。氏子域を退きまわした後に神社にやって来ます。本殿前では屋台を正面に着けて、上下に激しく振ります。霊振り(鎮魂)の意味でしょうが、屋台には御祭神は安座されてません。正面の御祭神に向って、氏子の“御参拝”という意味合いと考えた方が良いでしょう。


【蟷螂(とうろう)】 20:10〜20:30
頭に載せたカマキリの作り物を糸で操って、動かしながら舞います。【龍】とこの曲は、日本で残存する唯一です。京・祇園祭で巡行した蟷螂山がモデルだそうです。


【優填獅子(うでんじし)】20:30〜21:00
優填王は文殊菩薩の脇侍で、ここでは牛頭天王にダブらせてあります。獅子は疫病の象徴であり、牛頭天王が退治して疫病祓いの舞としてあります。優填王が暴れる獅子を、縄で絡め止めます。


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